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2010年11月 4日 (木)

出版業界の構造とその問題点(2)

 前回、書籍の流通と取次について書きましたので、今回は出版社と取次の関係という出版業界の本丸へと話を進めます。

 取次の別の側面の話を書こうとした矢先に、週刊ダイヤモンド10月16日号で、電子書籍入門なる特集が組まれており、ここでも話題として取り上げられていました。
 
 
 実の所、出版社と取次の関係については以前から指摘されており、私が改めて指摘するまでも無いのですが、まとめの意味で書かせてもらいます。
 出版社が出版した書籍は、取次に下ろされ書店に流通し、消費者の手元日本が届く仕組みについては、前回書いた通りです。
 実は、取次の機能はそれにとどまらず、出版者向けの金融機能もあります。
 WIKIペディアで「出版取次」を検索すると出てきますが、そこには、下記の記載があります。
 
金融
 書店への代金回収の繰り延べや出版社への委託販売代金の見込払いなど、実質的な金融機能を持つ。
 
 この、「金融」の意味するところは何でしょうか。
 では、書籍の流通と共に、お金の流れを見ていきましょう。
 書籍はまず出版(印刷・製本され本ができた状態)されたら、出版社から取次へ卸されます。この時点では、一部大手出版社を除き、お金は発生しません。卸された書籍は、取次から、書店に配本されます。この時点でも書店から取次へは仕入れ値は支払われません。
 その後、書店で書籍が販売され、販売された書籍代から、毎月仕入れ値額が取次に支払われ、取次から出版社へ流通手数料を引いた金額が支払われます。
  再販制度の契約では、だいたい書籍出版後6ヶ月が再販契約の期限になっており、6ヶ月以上たつと、書店が買い取る(返本できなくなる)ことが多いため、 残った本は書店から取次に返本されます。 取次は、最終的に書店で売れた書籍代と返本された本を精算し、出版社に残った本を返本します。
 このように、書籍は再販制度上、店頭で売れるまではお金の動きが無く、税務上も、書店の店頭に並んでいる書籍は、出版社の店頭在庫として取り扱われています。
 ところが、一部大手出版社で は、取次に卸した時点で卸した冊数の全冊分が一端出版社に支払われます。その後、取次は書店に配本し、6ヶ月後に返本されたら、出版社に返本された書籍を 返本し、返本分の差額を出版社から受け取ります。つまりは、出版社は出版した時点で売れるかどうかは別として、発行部数分だけお金を手に入れることができ るということです。WIKIに記載してある「委託販売代金の見込払い」がこれに当たります。
 判りやすく言えば、出版社は、取次に対して「借金」をしてそのカタに「書 籍」を納め、6ヶ月後の期日に売れた分の書籍との差額を返すということになります。極端な話、卸値千円の本を千部作ると、出版社は100万円を手にするこ とができ(100万円の借金)、半年後に1冊しか売れなかったら99万9千円を返金することになります。取次は出版業界内の金融機関のような機能を持って いると言われる所以です。
 
 このことは、2つの意味を持ちます。
 まず、出版社は取次から借金をしながら生計を立てているという点です。
  「電子書籍の衝撃(佐々木 俊尚 著)」などでも指摘されている通り、出版社は、とりあえず出版すればお金が入るため、資金繰りのために出版しているという側面があります。特に、返 本時には売れ残った代金を返金しなければならないため、新たに出版すれば再びお金が入ってきて、それで差額を埋めることができます。
 結局、資金繰りのために出版するような書籍に、どれほどの価値があるのか、私は疑問の念を抱かざる得ません(しかもそれが書籍をみても消費者には判らないのです!!)。
 本来の書籍の意義としては、不特定多数の人に有意な情報を発信する、或いは有意な情報を後世に伝えるということだと言えます。それが、自転車操業的に出版される書籍の中に、どれほど当てはまる物があるのか、一度根本に立ち返って考え直す時期に来たと言えるでしょう。
 もう一つは、産業構造として取次が大きな力を握っているということです。書籍を取次を通さずに販売することは可能ですが(ディスカバー21などが行っている)、一般的には、全国の書店向けに出版するには、その流通コストを考えると現実的ではありません。
  結局、書店への配本から代金回収まで全てを取次が握っている構造から、出版社は取次なしには成り立たなくなっています。この辺の事情が、出版社が諸手をあ げて電子書籍に移行出来ない原因にもなっています。よく言われることですが、電子書籍は、流通はAmazone(Kindle)や AppStore(iPhone/iPad)といったプラットフォーム業者が担うことになりますので、流通の中抜きとなり、取次や書店が不要になります。 当然、電子書籍化には取次はいい顔をしないはずです。あくまで私の想像ですが、出版社の自転車操業の重要な役割を担っている取次に対し、いい顔をするため に、大手出版社ほど電子書籍に様子見をしているといえるのではないでしょうか。
 
 以上、かなり取次を悪者のような書き方をしてしまいましたが、取次には、全国に均一料金で書籍を提供するなど、重要な役割も担ってきましたし、取 次があるからこそ、日本全国どこでも簡単に書籍が手にはいるようになったのは確かです。日本人は、諸外国に対し識字率が高く(100%に近い)、読書量も 多い国民です。この読書習慣と書籍が、日本の文化の多様性や経済力の一助となっていることは間違いないでしょう。それをこれまで支えてきた、出版物流通シ ステムとしての取次には、十分意味がありました。ただ、これからのネットワーク社会を鑑みて、このような出版業界のシステム自体を変革していかなければな らないことも事実です。
 次回は、主に出版社に主点を置いて考えていきたいと思います。

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コメント

出版社を経営しています。
上記の記事で違っているところが何点かあります。

まず、書店さんの支払いですが、当月入った商品代金は即請求になっています。したがって、取次書店間では、翌月には支払いが発生しています。
したがって、税務上、常備寄託(出版社から書店への貸出)という、特殊取引の本以外は、書店の資産ですので税金は、書店、取次、出版社のそれぞれに発生しています。

また、取次から、出版社への納品時即支払いですが、これは規模の大小ではありません。社歴の古い出版社の既得権で、主に第二次世界大戦敗戦時以前から営業していた出版社の特権です。事実上、この出版社たちが、取次を作ったので、あとから参加した出版社が、不利なのはやむおえないと思っています。

内山様

 ご返事が遅くなり申し訳ございません。
 ご指摘誠にありがとうございます。私の勉強不足で申し訳ございません。

 取次-書店間のお金の動きについては、もう少し調べた後、改めて改変させて頂きます。

 

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